一徹

ちょっと昔、カフェを始めようとしている時に陶芸家の浅井さんから「カフェの参考になると思うよ」と、一軒の喫茶店を紹介された。

南青山にある「大坊珈琲店」。

そんなに大きくはないがシンプルな店内は、こげ茶色というかコーヒー色の世界で店内全体に珈琲の香りが染み付いているようだった。初めて入った店だが妙に懐かしい感覚と「大人っぽさ」を覚えた記憶がある。

マスターは白いシャツに黒のエプロンで黙々と豆を煎り、コーヒーを淹れていた。その職人的雰囲気に男の一徹さを感じた。ミルクコーヒーをオーダーすると信楽焼のカフェオレボウルに入れてきたのが印象的だった。何よりこの店には流行を超えたカフェのエッセンスがギューッと凝縮されていた。

それから10年程後、骨董通りに用事があり再び店を訪れる機会があった。店内の雰囲気も、マスターの一徹な仕事ぶりも、コーヒーの美味さも微塵も変わってなどいなかった。

大坊珈琲店。VANの石津さんも足繁く通ったのもうなずける。数多くの年長者が気に入り、店を育ててきたことが「大人っぽさ」を醸し出している大きな要因だろう。

大坊珈琲店とは雰囲気が異なるが広尾の「パパスカフェ」、渋谷文化村の「カフェ・ドゥ・マゴ」や今は無くなってしまったが原宿パレフランスにあった「オーバカナル」などもヨーロッパのスノッブさで好きだった。
大坊珈琲店とは雰囲気が異なるが広尾の「パパスカフェ」、渋谷文化村の「カフェ・ドゥ・マゴ」や今は無くなってしまったが原宿パレフランスにあった「オーバカナル」などもヨーロッパのスノッブさで好きだった。

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