脱力志向

千倉の波が良かった日、鴨川のカメラマン利蔵さんが何枚か写真を撮ってくれていた。水も綺麗でとても気持ちの良い波乗りが出来た日だった。

だが自分の写真を見て思う。

体に力が入り過ぎている。もっと脱力し、棒立ちのままボトムターンをしたい。両手もダラリと下げてね。アレックス・ノストのボトムターンのように。

アルはダンサーのように波に乗る。その比類なきスタイルは、まるで前衛舞踏家のようだ。

あと気になるロングボーダーはデーン・ピーターソンだ。デーンのライディングには起承転結がある。テイクオフしてからプルアウトするまでの間にストーリーがある。ハングテン、カットバック、そしてプルアウトのアクションがどれもスタイリッシュ。

オールドサーファーとしての理想はスキップ・フライ。10~13feetオーバーの板の上で彼はただ波に合わせてトリムするのみ。余分な動きは何も無い。ミニマリズムこそジジイのライディングの理想形だ。

この写真を見て,そんな新たな思いが沸いた。

当然、指先までも脱力しないとスタイリッシュジジイとは言えません(笑)
当然、指先までも脱力しないとスタイリッシュジジイとは言えません(笑)

West Coast Jazzの爽やかさ

サンドカフェのトイレの壁に一枚のLPレコードが飾ってある。

アート・ペッパーの「Surf Ride」という古いウエストコーストジャズのレコードジャケット。

このレコードジャケットを描いた人はサーファーなのだろうか?波の描き方がとてもイイ。

ロングボードの上で楽しげにバランスをとるビキニの女性がパシフィックジャズの軽快な感じを良く表現している。

アート・ペッパー以外にもバド・シャンク、チェット・ベーカー、ジェリー・マリガンなどが有名だが、コーヒーを飲みながら休日の午前に聞くジャズとしてはどれも適している。

アメリカでの暮らしが長かったという初老のヨットマンの方が時々カフェに来て下さるが、帰る前に必ず「俺の彼女に挨拶してくる」と言ってトイレに入る。

青春時代が蘇るのだろうか・・・そんな粋な方もいる。

ジョエル・チューダーの「LONGER」や「Sprout」などのサーフムービーに流れるモダンジャズはロングボーディングと良くマッチしている。
ジョエル・チューダーの「LONGER」や「Sprout」などのサーフムービーに流れるモダンジャズはロングボーディングと良くマッチしている。

fade-out感

還暦までは何とか波乗りを続けたいと思ってはいるが、近頃とみに体が動かなくなってきた。

冬場で水も冷たく、フルスーツにブーツという出で立ちもあるのだが、体がだんだん反応しなく成りつつあるのを実感してばかりいる。

息も切れる。気管が狭くなったかのような息苦しさに苛まれることもある。

いずれにしても無理は禁物のようだ。

カミさん共々、自分たちの体力に合った状況で波乗りを楽しもうと言う心境のこの頃である。

古いスクラップブックに貼ってあった一枚の切り抜き。うまく波に乗れなかったのか、体のどこか痛めたのか知らないが虚脱感が漂っている写真である。彼女にボードを持ってもらうとは・・・今の私には、その黄昏感は良くわかる。
古いスクラップブックに貼ってあった一枚の切り抜き。うまく波に乗れなかったのか、体のどこか痛めたのか知らないが虚脱感が漂っている写真である。彼女にボードを持ってもらうとは・・・今の私には、その黄昏感は良くわかる。

マスター

カウンターの中では空気のような存在になりたいと思う。

フワッとそこに流れる風のように存在し、空気と一体化している。

時々消え、でも必要な時にはフッと現れる。

気配があって、気配が無い。

そんな境地に遊べたら本望だ。

カウンターの壁のヘミングウェイ。ビールをグラスでなくビアマグで飲んでいるところが渋い。
カウンターの壁のヘミングウェイ。ビールをグラスでなくビアマグで飲んでいるところが渋い。

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