ガラス壜の中の夏

カミさんの実家の倉庫に大きな古いガラス壜があった。

ポッテリ厚めで気泡が入っていて味のあるガラス壜だ。

最初はメダカを入れようと思っていたが、何故か写真集を入れてみたくなった。

好きな植田正治(1913~2000)の写真集。

ぴったりハマった!

植田正治は、生涯故郷の鳥取で作品を撮り続けた写真家。

中でも砂丘シリーズは今でもモダンで傑作だと思う。

見るたびに癒やされる。

私生活もアフガンハウンドを飼ったりイタリアの服が好きだったりと垢抜けていたと云う。

地方に暮らしていても心はコスモポリタンだったんですね。

私の指標の様な人です。

 

「絶対演出」手法の砂丘シリースの好きな写真。

皮肉にもコロナ禍の2021年夏はガラス壜の中に居る様な夏だった・・

奇縁な画集

一年ほど前だったか、ある新聞記事が目に止まった。

それは中国・北宋時代の名画中の名画、李公麟の「五馬図」が80年振りに世に現れたとの事だった。

清朝末期の混乱で日本に持ち込まれたその名画は昭和天皇の即位記念で展示されてから忽然と姿を消してしまっていたらしい。

その間、色々な憶測が飛び交っていたというが今回あるコレクターが東京国立博物館に寄贈したとの記事だった。

新聞に載っていた細い線で描かれた馬の絵が妙に私の興味をソソりいつか見てみたいと思っていた・・

 

今年、家族で千倉に移住された出版社を営む羽鳥さん(2018年8月22日のブログ参照)とカフェで何気ない会話を交わしていると中国の馬の絵の画集を出版していると云う。

もしやと思い詳しく聞いて驚いた。

羽鳥書店から李公麟「五馬図」(原寸大)を出版していたのだった・・

名馬を皇帝に献上するため大陸の西方から引かれて来たのだろう事が人物の顔から計られる。
清朝皇帝など多くの落款が愛でられ宝として受け継がれてきた証となる。しかし80年もの間いったいどこの誰が所有していたのか?大変良い保存状態だったというが、ドラマチックな経緯も興味深い絵だ。
その大判の画集は今、私の書斎のM・デュシャンのポートレートの下に飾られている。ブックデザインも原研哉とこだわるのが羽鳥書店。

人生、奇縁や奇遇があるから面白い。

ミューズ

白血病を克服し再びプールサイドに貴方は立っていた。

筋肉が落ち細くなってしまった貴方の姿を見て誰もが東京オリンピックは無理だと感じたに違いない。

だが貴方は奇跡的に舞台に戻ってきた。

その姿が私にはミューズに見えた。

 

「困難を乗り越えるには希望が必要」と貴方は控えめに語った。

オリンピックで泳ぎたいという希望を持ち続け大病を克服したように、アスリート達のひたむきでイノセントな姿を見て再び私達はコロナ禍の向こうに歩いて行こうとする力をもらうのだった。

ありがとうアスリート達、そして東京オリンピック。

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