カウンターの中では空気のような存在になりたいと思う。
フワッとそこに流れる風のように存在し、空気と一体化している。
時々消え、でも必要な時にはフッと現れる。
気配があって、気配が無い。
そんな境地に遊べたら本望だ。

「海岸美術館」時代から私のことを色々と気にかけて頂いている大先輩がいる。もう20年以上にもなるご縁だ。
大先輩がカフェに来てくれる度に私は今の日本の社会や政治のことなどを不躾に質問してしまうが、そういった事にイヤな顔ひとつせず深い洞察力をもって答えてくれる。その造詣の深さは芸術の分野にも及び西洋美術史にも詳しい。
先日、大先輩が大きなバッグを担いで店に入って来られた。そのバッグには高価なブランデーが何本も入っていた。そして「もう、これは飲まないから」と何と全部私にくださった。
こんな重い物をわざわざ横浜から担いで来てくれたその気持ちに目頭が熱くなった。本当にいつもお世話になってばかりである。
以前、大先輩の奥様から頂いたCDを聴きながら夜遅い時間にブランデーを舐める。しばらくブランデーなど飲んでいなかったがこの酒はホント「美味い」としか言いようが無い。
キューバの至宝コンパイ・セグンドのデュエットアルバムは色々なジャンルのシンガーとのデュエット曲集だ。特に奥様が夕方聴くと最高だと言うアフリカのディーバ、セザリア・エヴォラとの「黒い涙」が白眉だ。
ご夫妻からの気持ちを頂きながら、夜な夜な贅沢な時間が過ぎて行く。
カフェを始めて9年ほど経った頃、私はひどい腰痛に悩まされていた。
元々、腰の調子は良くなかったが、その時は安静にしていても強い痛みが続き、一週間位満足に睡眠をとれず朦朧とした状態にあった。
仕事中も長くは立っていられず傍らに丸椅子を置き、コーヒーを淹れる時だけ何とか立っていた。
忍耐力も限界にあった私は腰痛のスペシャリストDr.I氏に相談した(Dr.I氏もサーファー)。そして検査の結果「椎間板ヘルニア」の手術をしてもらう事となった。
I氏は新しい内視鏡を用意してくれ、おまけに手術の時はBGMにJAZZを流してくれた。もちろん麻酔で一瞬のうちに飛んでしまったが・・
あれから10年が経ち、Dr.I氏は日本でも指折りのGOD HANDとして活躍している。
私も変わらず波乗りを続けられているのは、あの時のDr.I氏の完璧なオペのおかげだと確信している。
ナタリー・ドロンとルノー・ベルレー主演の「個人教授」(1968年)というフランス映画を観ていたらスキーリゾートでのシーンがあった。
確かアボリアーズというスキー場だと思うが、古くからの建築様式で建てられたホテルやレストラン、クラブなどが程よく自然に溶け込みヨーロッパ人のリゾート感が伝わって来るようだった。ゆったりと自然の中で充足した倦怠を味わう仕組みを彼らは知っているのだ。
かつて日本にはスキーブームがあった。シーズンともなると大渋滞の道路と長いリフト待ちの列、それも日帰りや一泊くらいのハードスケジュールで皆スキー場に押し寄せた。ユーミンを聞きながら。
今、そのスキー場は閑散としていると言う。ロマン無き採算至上主義では良いリゾートは出来ないし、時が経ち淘汰されてしまう。(私は二十代の時影響を受けた浜野安宏氏の書いた「リゾート感覚」という本を思い出していた。)
ただ私の中では、あの頃せっせとスキー場に通った五十代~六十代の人達が子育ても一段落し再び雪国に回帰すると思える。もうちょっとゆったりと落着いたスタイルで。実際少しづつその兆候があるらしいが・・
晴れた日のスキーの気持ち良さ、のんびり温泉につかり、地酒を飲みながら郷土料理を味わう。昔とは違う、そんなスキー旅行を再びしてみたい。
ジャズギター好きの同級生Kの部屋で聴いたケニー・バレルの「BLUESEY BURRELL」(1962年)というアルバム。
随分前のことだが、このアルバムの1曲目があまりに気に入ってしまい即CDを購入した覚えがある。
「Tres Talbras」というタイトルのその曲は、ボサノバなのだがラテン的哀愁に満ちている。それを象徴しているのがコールマン・ホーキンスの切ないフレーズ。私はこのアルバムを聴く時、必ずこの一曲目を3回~5回は繰り返し聴いてしまう。そうゆうのってあるでしょう?
Kは大きなアルテックのモノラルスピーカーに佐久間式真空管アンプのサウンドシステムでジャズを鳴らしていた。また、壁には何本ものギターが掛けてあったが美しいブルーのケニーモデルのギターが光っていたのが印象的だった。
ダンディーなケニー・バレルのギターにコールマン・ホーキンスのテナー。ピアノはトミー・フラナガン。しかしジャズミュージシャンてなんでカッコいい名前が多いのだろう?
休日の朝は風も無く穏やかな晴天だった。
それだけで幸せな気分になれるのはジジイの証拠(笑)。今日は良き日だ。
こんな日は、まず布団を干し部屋の掃除をする。それから軽く朝食を食べコーヒーを淹れる。
部屋に入り、好きなレコードに針を落としゆっくりと葉巻に火を点ける。ずっと変わらない習慣だ。
私は、そんなリラックスした休日の午前を何よりも愛している。
午後からはカミさんと波乗りに出かける。ちょうど昨日ウェットスーツが届いた。
葉山のウェット工房「VELDOX」の高橋君のセンスにいつもお任せなのだが、今回も首後ろにペイズリー柄、腕には白い二本線が入りちょっと今風の感じに仕上げてくれていた。さすが・・
千倉ビーチは人も少なく腹~胸弱のちょうどいいサイズ。水も綺麗でファンサーフ日和だった。
ウェットスーツも暖かく動きやすく体にフィットしてくれたお陰でとても気持ちの良い波乗りが出来た。
これ以上何が必要?
そんなVery Ordinary Manな私です。
毎晩、午後10時からのレイトショー。
一昨日は、ダスティン・ホフマンとジョン・ボイド主演の「真夜中のカウボーイ」だった。昨日は、ミア・ファローの「フォロー・ミー」を観た。
大切な何かを映画はいつも思い起こさせてくれる。
木製三段のワゴン(多分イギリスの物)にプロジェクターとDVDプレーヤー、オーディオアンプが乗せてあって、スクリーン奥のスピーカーとアンプは長いコードでつながっている。
上映する時は部屋の隅からワゴンを定位置に転がしてくる。あとはスクリーンを下げるだけで自室がプライベートシアターに変わる。
今日はフランスは冬のドーヴィルの海岸にトリップしようかな。あの「ダバ ダバ ダー」が聞こえてきた!
クロード・ルルーシュの「男と女」(1966年)、音楽はもちろんフランシス・レイ。
久しぶりのブログです。
実は、自室で毎晩映画を上映していました。
80インチのスクリーンにプロジェクターとDVDプレーヤー、おまけにアンプまで組んでセッティングしてくれた友人N氏。
私の書斎は六畳の和室。その狭小な空間ゆえ巻き取り式スクリーンを鴨居に乗せ、プロジェクター、アンプ、DVDプレーヤーは接続したままキャスター付ワゴンに収めた。これで観たい時はスクリーンを下ろしワゴンを部屋の後方に転がしてくればいつでも鑑賞体勢に入れる。
昨年末、真空管アンプとスピーカーを譲って頂いたM氏、そして今回のN氏と両エキスパートのお陰で私は信じられないほど安くこれらの装置を手にすることが出来た。真空管アンプに灯を入れアナログレコードに針を落とす。又、スクリーンにプロジェクターから映像を投影するという行為は共通性を持っていると感じる。
私は、プロジェクターの映像がこれ程きれいだとは思っていなかった。それに80インチの迫力が嬉しくて若い頃好きだった映画を毎日観返していた。フェリーニ「甘い生活」「8 1/2」、ヴィスコンティ「ベニスに死す」、ゴダール「気狂いピエロ」、アラン・レネ「去年マリエンバートで」、タルコフスキー「ノスタルジア」・・
しかし、若さもあったんですね。今は最後まで観るとちょっとシンドイものが多い。
タルコフスキー「ノスタルジア」、ビクトル・エリセ「ミツバチのささやき」、ダニエル・シュミット「ラ・パロマ」などは六本木WAVEにあったCINE VIVANTで出会った映画だ。帰りにキャンティでケーキを食べるのが楽しみだった。
そんなことを思い出しながら夜更けまでレイトショーは続く・・
クリスマスにはクリスマスビールを飲む。
サンフランシスコの地ビールメーカー「アンカー社」がクリスマスに向けて出すスペシャルエールがある。毎年味付けとラベルデザインが変わるこのビールには、ハーブやスパイスがミックスされており香ばしくダークな味わい。この時期の楽しみだし気軽なプレゼントにもなる。
クリスマスにはクリスマスケーキを食べる。
近所のお婆ちゃんに付き合って(息子さんの店のケーキ)毎年頼む義理ケーキ(笑)。量産品だが、これはこれで懐かしい味がする。もうひとつはやはり近所の「オルネカフェ」に予約するシュトーレン。少しづつ大切に食べたいほど家族中がファンになっている。
クリスマスにはクリスマスソングを聴く。
ビング・クロスビーやナットキング・コールは家で、モータウンの往年のソウルシンガー達のクリスマスソングは車でよくかける。ジャクソンファイブの「I saw mammy kisshing santa claus」とか結構好きです。
そんな地味で平凡なクリスマスでいいんじゃないかな、と思う。
都会に住む皆さん、南房総に週末住宅を持つってどうですか?
例えば金曜日に仕事を終え、自宅に帰り車に荷物を積み家を出る。夜7時に出発すれば9時にはウィークエンドハウスに到着。(アクアラインと館山自動車道が整備されたお陰で都心からだと1時間半から2時間で南房総に来れるようになった)月曜日の早朝に帰れば都会4泊、週末住宅3泊のスケジュールが可能だ。
別荘というと贅沢な感じがするが週末住宅は小さくて簡素で良い。トレーラーハウスのようなものでも周りに広いデッキを張れば素敵だ。(潜在的ポテンシャルを秘めた南房総の地価は想像以上に安い)
安い中古住宅をコツコツ時間をかけて自分たちの好みに改修するのも楽しい。菜園や庭の植栽も思いのままだ。何より好きなアウトドアスポーツを混雑とは無縁のフィールドで満喫出来る。釣り、ゴルフ、波乗り、ヨット、ダイビング、自転車など。
土いじりや自然と接するスポーツなどの一次体験は免疫力を上げ生きるエネルギーを充電してくれるし、南房総のゆったりとした時間の流れが現代社会のストレスから遠ざけてくれる。
もちろん地元の人たちや地域の文化やコミュニティーを尊重するのはグローバルなマナー。
もし、貴方が南房総に週末住宅を持てたら当分の間は友人達には秘密にしておこう。こんないい場所うかつに喋れないから・・
知り合いの方から勧められていたウッディ・アレンの「ミッドナイト・イン・パリ」だったが上映中には行けず、最近DVDでようやく観れた。
主人公は、パリ観光中に夢にまで見た1920年代のパリに迷い込む。そこでヘミングウェイ、ピカソ、マチス、フィツジェラルド、マン・レイ、ダリ、ルイス・ブニュエルらパリに集まっていた憧れの芸術家たちと関わることになる。
しかし過去にタイムスリップしてヘミングウェイやピカソと会えるなんて、まさに「大人のお伽噺」のようだ。
ウッディ・アレンのこの種の映画はどれもよく出来た佳作が多い。「カイロの紫のバラ」もそうだし「ボギー!俺も男だ」も楽しかった。
ウッディ・アレンはファンタジーを上質に料理する達人だ。